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50代無職独身男が身につまされた「ミッシングワーカー」問題

【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第十九回

■介護離職者がもう一度社会に出て働けなくなる本当の理由

連載「母への詫び状」第十九回〉

 先日NHKスペシャルで特集された「ミッシングワーカー」が、SNSなどで話題になっている。

(画像:フォトライブラリー)

 57歳、無職独身の男性。親の介護のため40代なかばで仕事をやめ、10年が経つ。親が亡くなった後も、仕事を再開することができない。介護期間中に社会との接点が失われ、体力も気力もなくし、働くことをあきらめてしまった……。
 こんな例が次々に紹介される。ぼく自身、身につまされる話ばかりで、とても他人事とは思えなかった。

 介護などの理由で長い期間、仕事から遠ざかり、働くことをあきらめてしまう人。これを「ミッシングワーカー」と呼ぶのだという。

「失業者」の統計に入るのは、求職活動している人だけ。しかし、ミッシングワーカーは求職活動すらしていないため、失業者の統計にも入らない。NHKの試算によれば、失業者72万人に対して、ミッシングワーカーは103万人いると推定されていた。

 ミッシングワーカーの中身がすべて介護離職者ではないだろうし、介護の問題にしたいなら新しいカタカナ語を持ち出さないほうがいいとも思うが、このような人たちの存在がクローズアップされるのは、近い立場の者として感謝したい。

 番組を見てもっとも身につまされたのは、当事者たちの見た目。ストレートに言えば、しょぼくれた外見である。

 髪はボサボサ、衣服もさえない。何よりも目に光がない。残酷だったのは、彼らがまだ仕事をしていた頃の写真との対比だ。働いていた当時の顔写真は目に光があり、同じ人物とは思えないほど、ひとめで違う。

 何年もの間、介護に追われ、ろくに人と接することなく、社会と隔絶された環境に身を置いていると、人間は総じてこんなしょぼくれた外見になってしまうのか。

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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